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最高裁判所第二小法廷 昭和33年(オ)10号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人和気松市郎の上告理由第一点について。

上告人は昭和三〇年五月一四日本件再審の訴を提起したのであるが、再審訴状には所論判断遺脱の再審事由は記載されず、その後昭和三一年四月一日附再審訴状補正書と題する書面を原審に提出し、右書面中に始めて所論判断遺脱の点を本件再審事由として摘示し、同年七月三日午前一〇時の原審口頭弁論期日において上告人代理人が右書面に基いて陳述したものであることは原判決の認定するところである。そして、所論の再審事由の存在は特段の事由のない限り判決正本を一読することによりこれを知ることを得べく、これを知り得なかつたとする特段の事由の主張立証はないのであるから、上告人は前示判決正本の送達により右再審事由の存在を知つたものと認定した原審判断は相当であつて、所論のように再審事由の主張を右日時までなさなかつたからといつて、右日時までこれを知らなかつたものとすることはできない。そして本件におけるがごとく、再審の訴提起の後に、民訴四二七条二項によつて不服の理由を変更した場合においても、新な再審事由についてその出訴期間の遵守は、変更の時を標準とすべきものと解すべきであるから、再審事由を知り、かつ旧訴判決確定の日から三〇日を経過した後に申立てた所論の再審事由は不適法として却下すべきであつて、これと同趣旨に出た原判決は結局相当であるから、論旨は採用することはできない。

同上告理由第二点について。

原判決は旧訴第一審証人矢口幸作の供述中所論の部分が同証人の偽証であることを認めるに足る証拠がない旨を判示しているのであつて、右判断は肯認できるから、たといその判示中所論の不備があつたとしても右判決に影響がなく、論旨は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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